移動体用高精度位置標定システムに関する調査研究

 カーナビゲーションシステムは1982年に世界で初めて実用化され、移動体用位置標定システムのさきがけとなるシステムとして登場した。そして、GPSを利用したカーナビゲーションシステムが1990年に実用化され、以降、カーナビゲーションシステムは慣性航法をベースにGPSからの位置情報で位置を補正する方式が多数を占め、現在までに、累計出荷台数が1700万台を超え、自動車の4台に1台の割合で装着されるまでに普及した。

 GPSによる位置標定技術は、固定点での位置標定において、めざましく進展し、高精度な位置標定を実現した。しかし、移動体での位置標定においては、高精度な位置標定を実現できていない。1996年に、ITS関係省庁で策定した『高度道路交通システム(ITS)の全体構想』において、ナビゲーションシステムの高度化が開発分野の先頭にあげられ、ナビゲーションシステムの高度化が図られ、また多くのITSサービス実現の基盤技術としての利用が期待されているにもかかわらず、移動体での位置標定についての研究開発は立ち遅れていた。

 このような背景のもと、日本自動車研究所では、機械システム振興協会から委託を受け、2003〜2004年度のプロジェクトとして移動体に着目した高精度位置標定システムに関する調査研究を実施した。

 2003年度の調査研究の結果、移動体の位置標定は、GPS衛星を十分捕捉でき、電波の反射の影響もない開放地においては固定点と同様に高精度を達成できるが、その他のエリアにおいては高精度を実現できておらず、エリアによって位置精度には大きなバラツキがあることがわかった。

 移動体にとっての位置標定は、絶対位置の標定が可能なGPS測位が中心となるが、いつでも、どこでもGPS測位ができるわけではない。そこで、2004年度の研究では、エリアを、GPS衛星の見えるところ、見えないところ、見えてもGPS測位データが信頼できないところの三つのエリアに分けて、それぞれのエリアに対する高精度化方策をどのように整備していくかについて検討した。

 具体的には、三つのエリアにおいて位置精度の評価実験をおこない、また、さまざまな位置精度改善方式を調査することにより、移動体での位置標定の高精度化にむけての検討を実施した。

 本プロジェクトの実施にあたり、日本自動車研究所内に移動体用高精度位置標定システム研究委員会およびワーキンググループを設置し、学識経験者、自動車・車両部品メーカ、情報通信機器メーカ等の委員の方々との議論をもとに検討をおこなった。

 本報告書(要旨)は、2004年度に実施した調査研究の成果をとりまとめたものである。

目次

1.調査研究の目的
2.実施体制
3.調査研究成果の要約
 第1章 調査研究の方法
  1.1 調査研究全体の方法
  1.2 前年度調査研究の方法とまとめ
  1.3 本年度調査研究の方法
 第2章 位置精度改善の評価実験
  2.1 評価実験の目的と計画
  2.2 結果および今後の課題
 第3章 位置精度改善方式の調査、検討
  3.1 GPS補完方式の調査、検討
  3.2 マルチパス軽減方式の調査、検討
  3.3 位置精度改善方式の比較検討
 第4章 移動体用高精度位置標定システムの検討
  4.1 位置精度改善方式の組合せ検討
  4.2 高精度化へのフレームワーク
  4.3 移動体用高精度位置標定システム
4.調査研究の今後の課題及び展開